257.水辺のシカ The Stag and His Reflection
暑さに参ったシカが水を飲もうと泉へとやって来た。
シカは、水に映る自分の影を見て、枝わ かれした大きな角が誇らしかった。
しかし、ほっそりとした貧弱な脚には腹が立った。
このよう にシカが、自分の姿を眺めていると、ライオンが水辺にやってきて、
シカに飛びかかろうと身を 屈めた。シカはすぐさま逃げ出した。
広々とした草原を走っている時には、全力疾走ができたので、
ライオンとの距離を容易に引き離すことができた。
しかし、森に入ると、角が絡まってしま い、
ライオンはすぐさまシカに追いつきシカを捕まえてしまった。
今となっては、後の祭りなのだが、シカはこう言って自分を責めた。
「なんてゆうことだ!私はなんという勘違いをしていたのだろう!
自分を助けてくれる脚を 軽蔑し、
自分を破滅に追い込んだ角を尊んでいたとは……」
教訓;価値のあるものが、過小評価されることがよくある。
タウンゼント版イソップ寓話集より
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