180.キツネとハリネズミ
川を泳いで渡っていたキツネが、急流にさらわれ、深い谷底へと押し流されてしまった。
キツ ネは傷ついてそこに横たわり、長いこと身動きできないでいた。
すると、血の臭いを嗅ぎつけた、アブの大群がわんさか押し寄せ、キツネにとりついた。
そこへ、ハリネズミが通りかかった。
ハリネズミは、キツネの悲惨な姿を見ると、そのアブど もを追い払ってやろうか?と言った。
するとキツネはこう答えた。 「どうか、その者どもに害を加えないでくれ!」
「ええ? どういうことなんだ?」ハリネズミが訝しげに聞き返した。
「君はこいつらを取り除 いてもらいたくないと言うのか?」
「もちろんだとも」キツネはそう答えるとこう続けた。
「だってね、このアブどもは、血をたら ふく食らっているから、もうほとんど刺さない。
けれども、君が、この満腹している奴らを追い 払ったりしたら、
腹を空かせた奴らがやって来て、残りの血まで全部吸われちまうよ」
タウンゼント版イソップ寓話集より
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