200.オオカミとヒツジ飼 あるオオカミが、ヒツジの群の後について歩いていた。 しかしこのオオカミは、ヒツジを一匹 たりとて傷つけようとはしなかった。 初めのうちヒツジ飼は、警戒して、オオカミの行動を厳し く監視した。 しかしいつまでたっても、オオカミは、ヒツジを噛んだり傷つけたりする素振りす ら見せなかった。 いつしかヒツジ飼は、オオカミを悪賢い敵ではなく、群の見張り役と見なすよ うになっていた。 ある日のこと、ヒツジ飼は町に用事が出来たので、 ヒツジたちを皆、オオカミに任せて出掛け て行った。 ところが、オオカミはこの機会を待ちわびていたのだ。 オオカミは、ヒツジに襲いかかると、 群の大部分を食い尽くした。 ヒツジ飼が町から帰ってきて、この惨状を目にするとこう言って嘆いた。 「こんな目に会うのも当然だ。オオカミなど信じた自分が馬鹿だった」 タウンゼント版イソップ寓話集より